3月16日(水)、Gault & Millau Japan2022が発売になった。
発売前日3月15日(火)に各賞発表・授賞式がオンラインで配信された。
発表アーカイブはこちら
今年はビデオ配信の形式で授賞式が行われた。
ゴ・エ・ミヨ2022年の各賞は以下の通り。
冒頭の3つのシェフ賞には今年も生年を付した。
この3賞は、【年齢】が受賞のある程度の目安となっている賞だからだ。
今年のシェフ賞(chef de l’annee)
調査した店舗の中で、才能を縦横に発揮し、最も斬新で完成度の高く、インパクトのある料理を出した料理人
谷口英司 氏(レヴォ・富山)1976年生
明日のグランシェフ賞
確固たる基本技術の上に、独自の料理世界を築き、優れた才能として日本の料理界を牽引することが期待される料理人
田熊一衛 氏(レクレルール・東京)1981年生
藤井寛徳 氏(御料理ふじ居・富山)1976年生
前田元 氏(モトイ・京都)1976年生
期待の若手シェフ賞
才能と情熱、技術とが、今後の活躍を大いに期待させる新進気鋭の料理人
井上稔浩 氏(ペシコ・長崎)1986年生
鈴木夏暉 氏(Restaurant Naz・長野)1994年生
古屋聖良 氏(クラージュ・東京)1989年生
トランスミッション賞
培ってきた知識と技術を、時に国を超え、世代を超えてトランスミッションする(=伝える)ことに多大な貢献をされた料理人
中道博 氏(モリエール・北海道)
ベストパティシエ賞
デザートの独創性と個性を特に際立たせ、かつコース料理の締めくくりにふさわしいレストランデザートを提供しているパティシエ(パティシエール)
加藤峰子 氏(ファロ・東京)
ベストソムリエ賞
ワインの知識やワインリストの構成のみならず、卓越した接客術を持ち、常にお客様重視の姿勢でサービスを行うソムリエ
飛田泰秀 氏(乃木坂しん・東京)
トラディション賞
その土地が育んできた伝統文化を守り、時に挑戦を試み、次世代へつなぐ知識と技を磨き続ける料理人・職人・生産者
伊藤剛治 氏(比良山荘・滋賀)
イノベーション賞
自身のキャリア、料理哲学、コンセプトなどにおいて挑戦することを選び、新たな切り口で取り組む料理人・職人・生産者
蒲地勝 氏(カマチ陶舗・佐賀)
テロワール賞
土地の風土や食材、育まれてきた文化を尊重しつつ、食材または料理を通じて独自の挑戦を試みている生産者または料理人
北嶋靖憲 氏(鎌倉 北じま・神奈川)
桑木野恵子 氏(里山十条 早苗饗・新潟)
豊島雅也 氏(トヨシマ・山梨)
調査対象地域は以下の通り。
【2019】東京・北海道・石川・富山・福井・静岡・愛知・岐阜・三重・京都・兵庫 529軒
【2020】東京・北海道・石川・富山・福井・静岡・愛知・岐阜・三重・大阪・京都・兵庫・奈良・滋賀・和歌山・岡山・広島・山口・島根・鳥取・徳島・香川・愛媛・高知 673軒
【2021】東京・北海道・石川・富山・福井・静岡・愛知・岐阜・三重・大阪・京都・兵庫・奈良・滋賀・和歌山・岡山・広島・山口・島根・鳥取・徳島・香川・愛媛・高知・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・神奈川・山梨・長野・新潟 403軒
【2022】(上記に加えて)福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄 477軒
調査地域が昨年より広がって、41都道府県となった。
九州沖縄地区の追加で、残るは東北6県のみとなった。
掲載軒数は477軒。
九州・沖縄(全27軒)が新規掲載となった。
昨年が407軒だったので2割ほど掲載店舗が増えた計算になる。
19/20点
赤坂 松川(→)
日本料理 龍吟(→)
18.5/20点
エスキス(→)
カンテサンス(→)
ロオジエ(↑)
日本料理 かんだ(→)
飯田(→)
未在(→)
18/20点
ジョエル ロブション(→)
神楽坂 石かわ(→)
虎白(↓)
日本橋蛎殻町 すぎた(↓)
ハジメ(↓)
菊乃井 本店(→)
17.5点
茶禅華(→)
まき村(→)
銀座 すきやばし次郎 本店(↓)
青空(→)
レヴォ(↑)※移転前
祇園さヽ木(→)
京都吉兆嵐山本店(→)
上下はすべて0.5点で、高評価店のなかに1点以上上下した店はなかった。
・九州・沖縄(全27軒)
・その他の地域の新規掲載店(主に仏伊)
(東京)ラルジャン/セザン/ネモ/レクレルール/アマラントス/イルラート/ファロ/グッチオステリア/ミソラ/アカ
(北海道)パルコフィエラ/ペイジャフロール
(北陸)レヴォ
(関東甲信越)白井屋ザ レストラン/ファン ダルクオーレ/レストラン カム
(東海)メゾン ケイ/アリーニュ
(関西)アドック/レストランコケ
(中国)レ ピエール プレシューズ/ムク
(四国)ペルトナーレ
「今年のシェフ賞」、谷口英司さんが受賞した。
谷口さんは、日本にゴ・エ・ミヨが上陸した初年度、2017年に一度同賞を受賞しており、今年の受賞は2度目になる。
ほんの6年のあいだに同じ人が受賞するのは意外な感もあったが、フランスではミシェル・ブラス(1986・1988)、ベルナール・ロワゾー(1986・1988)マルク・ヴェイラ(1989・1990)など、過去にシェフドラネを複数回受賞したシェフがいる。
谷口さんは2020年末にシェフを務める「レヴォ」を富山市から南砺市利賀村に移転し、さらに自身の料理の個性に磨きをかけたことは衆目の一致するところだろう。
そういう点では、移転してちょうど1年経過した今年の受賞というのは、二度目であろうとも理にかなっている。45歳という年齢も、同賞の受賞にはちょうどなのかなと思う。
ちなみにフランスの今年の受賞者はユーゴ・ロランジェ氏、34歳だ。父はオリビエ・ローランジェ氏(1994年受賞)。30代前半という年齢は鮮烈だ。
シェフドラネ、年齢はそれほど重視されていない(少なくともフランスでは)という印象を持った。
掲載軒数は昨年403軒に比して今年は457軒。
これまで対象地域を少しずつ広げてきたゴ・エ・ミヨジャポン、今回から新たに九州・沖縄が加わって、対象地域がほぼ日本全国となった。
「今年の調査地域は東北以外すべて」と書いてしまった方が早い。
対象地域が広くなっても、県あたりの掲載軒数はほとんど減っていなかった。九州沖縄の27軒に加えて、各県で少しずつ軒数が上乗せされたように見える。
県ごとの掲載店舗数を見ると、ひと県につき5軒、10軒という掲載の県がけっこうある。
これは「載ったかどうか」の方がトピックスで、点数が何点かというよりも載ったことそのものが人々の記憶に残るだろう。
東京のフランス料理が、52→58軒と6軒増えたのが目を引く。
全体的にフランス料理(と日本料理)偏重なのはミシュランと同じ。
東京のイタリアンの軒数も12→14軒と増えているものの、フランス料理の軒数に比して偏重な感はやはり残る。食べログなどで見ると実際の軒数はイタリア料理店の方が圧倒的に多いので。
ゴ・エ・ミヨは2007年に日本版が出てから、今年の刊行が6年目にあたる。
最初の2007年版は東京+北陸3県からスタートして、年を追うごとに調査範囲を広げてきた。
今年の2022版では九州沖縄地方が新たに加わり、残るは東北地方のみ。
これでおそらく来年度は文字通り「ジャポン」、日本全国が対象になる道筋が見えてきた。
そうするとこの1冊で日本全国をカバーするということになり、書籍の形としては、フランスなど他国のように、どんなに分厚くなっても分冊にせず国内分を1冊で出す感じになる。
ユーザーの視点で考えると、国内まとめて1冊にすることのメリットは一覧性だ。
どのレストランに行こうか? と思ったときに、あちこちの地域をまとめて見られる書籍はやはり便利だ。
ただし、今は店を探すのに書籍という時代でもないか、とも思う。
書籍よりwebがどれだけ見やすく、かつ一覧性が高いかの方が重要であるとすれば、この部分についてはミシュランやベスト50のサイトの利便性の方がずいぶん高いと言える。ゴ・エ・ミヨのサイトの使い勝手にはまだまだ工夫の余地がある。
ゴ・エ・ミヨって何? というおさらいはこちらをどうぞ。
ゴ・エ・ミヨの特色は、店だけでなく人を顕彰するのに力を入れている点だ。
今年のシェフ賞、明日のグランシェフ賞はじめ、ベストソムリエ賞やイノベーション賞、テロワール賞など、個人の活動をすくい上げることに力を注いでいる。
今年、カマチ陶舗の蒲地勝さんが受賞したイノベーション賞のキャプションに新たに「料理人・職人・生産者」と「職人」ということばが追加されたように、テロワール賞やイノベーション賞などは、授賞対象者を厳密に設定せず、年ごとに授賞対象の範囲を広げてきた。
これらの賞は「飲食店には、料理人、生産者、職人などさまざまな業種の人が携わっている」というメッセージだろう。人に焦点を当て、誰にでも理解しやすい業績(ストーリー)を紹介することは、現代の時代風潮にも合っている。
私たちが今頂いている評価は、主に「人」に目を向けることによって得られたものです。
レストラン空間の中で起こることのみに注目するのではなく、シェフ自身、ソムリエやパティシエ、サービス責任者、そして、サービスや厨房の中のスタッフに至るまで、レストランでの最高の瞬間を作り上げる「人」すべてにフォーカスしているのです。
(ゴ・エ・ミヨガイドディレクター マーク・エスケレ氏)
今日の、そして未来のグランシェフに光を当てること。
「人」に寄り添うことで、また来年も新たな世界が見える気がする。
昨年の感想