もう1ヶ月以上前のことになるが、東京・青山で、Akorduの川島シェフの料理を頂く「シェフズキッチン 真夏の夜の記憶」と名付けられたイベントが行われた。
奈良のモダンスペイン料理店「Akordu」が惜しまれつつ今年3月に閉店、移転準備中である川島シェフの料理が東京でいただけるとあって、会場は80名近い”川島ファン”で満員。
川島シェフの料理の特徴は、Akordu(バスク語で「記憶」)時代から一貫して、食べ手の記憶を思い出させるトリガーが、食材、視覚、調理法に散りばめられているところにある。
そこに展開されるのは、私たちが緑豊かな自然と触れ合ったときの記憶である。
川島シェフのホームグラウンドである奈良の自然にまつわる記憶。それを思い出させる具体的な触感、匂い、視覚…などが、ひとつの料理という形をとって私たちの前に表れる。もし食べ手にその記憶がなくても、料理で追体験することができる。
まず五感を研ぎ澄まして食べる。そのあとで川島シェフから「種明かし」が行われる。
そこで食べ手は、食べたときに感じた感触や味のひとつひとつに川島シェフの思いや、なぜその食材かという理由があったのだと知ることになる。
メニュー
野迫川村産アマゴ 炙りとリエットと”岩”
サフラン 落ち葉と根 深い緑と苔のかおり
土の香りのタルタル 様々なハーブと花 ブルーベリー 炙ったラルド
大和丸ナスで和えた、三輪・山本のデュラム粉の手延べそうめん、アミカサ茸とレーズンのカルド 乾いた鶏
葛城の合鴨 小麦餅とブルーベリーヴィネグレタ
唐辛子と地の人参
レモンサワークリーム 澄んだホエーとローズマリー
アコルドゥのピスタチオ・大和茶緑茶ジェラートと茶葉
麦とハーブのインフーション
“奈良の未来” 菖蒲池・エアダールのパン
奈良産ミルクのバター
奈良の食材が多く使われている。今日は、生産者さんが何人も会場に来ておられ、壇上で、川島さんの料理に使われている感謝のスピーチをされていた。
このひと皿は、夏の岩場を歩くときの川の匂いや足が岩の苔でぬめる感じを、アマゴの触感で表したものだという。
奈良県西吉野・野迫川(のせがわ)村のアマゴ リエットでしっとりとした質感と淡い香りを感じます。炙りと都祁村(つげむら)緑茶の「苔」で清流の緑の香りをイメージします。シェリービネガーで和えた徳島産「生きた海苔」はより川の湿った余韻を広げます。
(川島シェフの解説より)
この三輪素麺シリーズは、いろいろなバージョンでこれまで川島さんの料理に登場しているけど、これはそのうちでもうまみの凝縮度や味のバランスですごいと思ったひと皿。
だしはレーズンとモリーユでとってあり、削り節は合鴨のスモーク。
食感は削り節と同じで味と香りが肉!という驚き。この香りは、次のメインの合鴨のローストへつなぐ役目も果たしていたと思う。
食事が終わり、川島シェフが挨拶に登場。
80人以上の食事を一斉に作るという仕事を終わってほっとしておられる様子に、一同拍手。
そのあと、川島シェフのスピーチの中で、奈良の生産者さんたちを、料理に使うことで応援していきたいと強調されていた。
「奈良の生産者さんたちは奥ゆかしくて宣伝もあまりなさらないので素晴らしい食材があまり知られていない。私たちは食材の固有性・土着性は生かしつつ、料理を洗練させなければならないと思う。その旗振りの役目をしていきたい。『土着と洗練』が今後のキーワードだと思っている。と。
料理マスターズサポーターズ倶楽部主催
「シェフズキッチン」vol.8「真夏の夜の記憶」
川島宙(奈良・Akordu)シェフ
日時 2014/7/28
場所 CAY 東京・青山