2015年、幸運にも予約が取れて行くことができたレストランの中から、またいつか頂くことができればと願う料理を。
そのときの自分自身の体調・気分などのコンディションや訪れたときの季節などの変数によって料理を食べたときの印象は大きく変わるので、それらが幸運にもかみ合った例としてお読み頂ければ幸いです。
海外編
グリルしたキャベツ、魚卵と生クリーム、ケールのオイル(Faviken Magasinet・スウェーデン)
ミニマリズムを体現したような料理がこちらの持ち味で、今回は少し路線変更されて複雑化していたものも。それでもFavikenでは個人的にはミニマリズムの料理に惹かれる。
バターナッツかぼちゃ、野生の薔薇の花びら、キャビア、大麦のソース(noma・コペンハーゲン)
大麦を発酵させたソースとかぼちゃの取り合わせ。nomaではいま、発酵を料理に生かすことがテーマの一つのようで、その路線上にあるもの。
セップ茸、イカ、サリコルヌ、キノア(L’Auberge de 15・パリ)
イカとサリコルヌとキノアの食感のコントラストはこれまで味わったことのないものだった。守江さんの料理は来年、再来年また頂いてみたい。
オッソブーコのリゾット、サフランのソース(Tokuyoshi・ミラノ)
伊勢丹のフェアでも出された、ドライなリゾット。ポン菓子の見た目と食感の楽しさは、ソースのうまみがベースにあってこそ。オープン1年経たずのミシュラン1つ星おめでとうございます。
酔っ払い蟹(天香楼・香港)
蟹の味噌の甘み爆発。痛風まっしぐら系。紹興酒となぜこんなに合うんだろうか。イシモチの燻製も忘れがたい。
国内編
仔鴨の心臓と里芋(Tirpse・東京)
オスロのMaaemo出身の春田さんの料理、北欧とフレンチのハイブリッド。ハツと里芋だけというシンプルさで複雑な味わいが出るのが不思議。イカと西洋わさびの白コンビも良かったな。パティシエールのナカムラキリコさんのデセール、Tirpse内での平日のみのコースも評判だ。
フォアグラのポワレ(オマージュ・東京)
「イメージとしてはサムゲタンです」。松の実と糸唐辛子と鶏と米の味がするソース。荒井さんの、フランス料理に何かエッセンスやアイデアを加える引き出しは多くて毎回楽しい。
ミルフィーユ(ラトゥーエル・東京)
アラミニッツで出されたミルフィーユ。こんなはかなく崩れそうな軽いミルフィーユにするには、すぐ食べられるというレストランならでは。
スパイシーなクスクス(アスパラガス・ブロッコリー・長芋・大黒シメジ・アーモンド・ペコリーノ)(il Pregio・東京)
軽く繊細な食材を隙なく組み合わせると強固な印象を残すということを実感した岩坪さんのひと皿。その緊密な感じが、ガラムマサラでもクスクスでも最終的にはイタリアンなのだと思わせる要素なのかも。
春雨の上湯スープ(福臨門・東京)
東京銀座の福臨門が今年いっぱいで閉店、東京は丸ビル店に集約される。写真家・菊地和男さんと中華の師匠・出挙いたこさんが組んでくださった特別料理を頂く機会に恵まれた。上湯でなく頂湯であったとか。この突き抜けた感じは生きてて良かったと思える味だった。
カジョス(Ardoak・東京)
酒井さんの料理の、赤ピーマンのピキージョに代表されるような現代的な明るさのなかに、このようなクラシックなひと皿が入るとハッとする。カジョスが食べたくて、お願いして良かった。隣のうさどらは飾りじゃないのよ。
仔鴨のロースト(bb9・神戸)
晩秋のジビエは岐阜の仔鴨、身が小さい分、味が詰まっている。付け合わせは仔鴨のハツに晩秋のふきのとうの苦味。今年最も印象に残ったジビエ。
和歌山産アズキハタのシャンパーニュ風(オテルドヨシノ・和歌山)
もうあちこちで言及されているけどやはり挙げたい手島さんのひと皿。
何も足さない、何も引かない。華やかさではなくソースの深みでハレの料理の非日常感は出る。
アカハタの蒸し物大豆風味(チャイニーズレストラン巴蜀・博多)
香港で頂く清蒸とは異なり、前日に〆て一晩寝かせたハタと、荻野さん自家製の豆の調味料(ドウスー)の組み合わせ。
九州野菜のガルグイユ(オーグー ドゥ ジュール メルヴェイユ博多)
今年メルヴェイユ博多のシェフを引き継いだ佐賀出身の小岸さんのガルグイユ。見た目の華やかさよりも、料理全体としての勢いのようなものがストレートに感じ取れた。
番外編
カシオペア車内での朝食
乗ったのは3月。カシオペアにひと部屋しかない予約至難の最後尾の展望車両に乗る機会に恵まれた。
朝食は青函トンネルを抜けたあとの、まだ雪の残る函館付近を走る時間帯。カシオペアの上野ー札幌の定期運行は16年3月で終了とのこと。
1年間お読みいただきありがとうございました。
来る2016年もよろしくご愛顧のほどを。