昨年に続き、また8月のコペンハーゲンにやって来た。
猛暑の東京からさらに猛暑のドーハを経由して、2日がかりでたどり着いた身には、例によって北欧は少々肌寒い。
1年ぶりに行けるデンマークでどこのレストランに行くか。
一回あたりの滞在日数が少ないせいもあるのだけれど、今回も2泊で行けるのはMax3食だ。
切れるカードは3枚(3食)、しかも定休日とお店のバカンスを考えると、候補はどんどん狭まってくる。
幸いにも予約が入れられたのはまずここ、コッケリートだった。
モダンノルディック料理を毎度食べていて感じるのは、歴史が浅く料理の作り方が自由であることだ。
逆に言うと、料理の見た目でどんな味がするのか想像がつかない。
それでも、見た目でおいしそうかそうでないか、だいたいの予測はつけられることもある。
ここの料理は前からサイトで見ていて、その美しさやエッジの立ち具合が際立って感じていた。
写真の背景は黒が基調で、食材の姿が見える、作り手の精神性まで感じさせる料理写真。
見せ方がうまいのも、今日ではレストランに必要な資質の一つかもしれない。
コッケリートはミシュラン1つ星。現在のシェフDavid Johansonは、同じくコペンのミシュラン1つ星Kong Hans Kælderで働いていたこともあるらしい。
メニューはコースのみ、通常12品かライト8品。
通常メニューから4品抜かれたものがライトメニューとなる。
今回はライトを選択。
The Light Menu:900DKK
Snacks
Jerusalem artichokes / cep / cress
Potato tart / cotTAGSe cheese / flowers
Cod / beet / capers
Chicken / maize / sorrel
Rib / blackcurrant bbq / pine
Amuse-bouche
Poached quail eggs / smoked herring / radish
Starters
Yellow beets / browned butter / herbs
Scallop / pear / verbena
Plaice / shrimp / tomato
Veal / peas / horseradish
Main course
Pork / oysters / parsley
Dessert
Cucumber / white chocolate / mint
Lemon / caramel / sorrel
Coffee and petit fours
軽やかなスナック。
甘い・辛いをはっきりさせるのはこういうときのスナックのお約束だ。
リブのバーベキュー、中華のような甘辛い味付けも。
Yellow beets / browned butter / herbs
黄ビーツ、大葉とパクチー、パイナップルと肉類のソース。
薔薇は固めに火を通した黄ビーツ。味つけはほとんどしていない。
その代り脇役が派手だ。ソースはパイナップルの甘酸っぱさが強調され、付け合わせの野菜が大葉とパクチーという強烈なもの同士の組み合わせ。軽いオイルとビネガーでは中和できそうもない。
しかし、ぎりぎりのところで破綻はしていないのはすごい。味の濃いところとそうでないところがはっきりしているからかな。
主役は味が薄く、脇役の味の方が濃い。
Scallop / pear / verbena
大根と洋梨ペーストのラビオリ、ホタテの身とスープ
白のコンポジション。
黒い皿に白い食材の色の組み合わせは、Kokkerietの得意種目かもしれない。
これも先ほどと同様、大根はほぼ味つけがなく、白いスープがホタテのスープ。味は濃いめ。
スープと一緒にかけられた白い小さな塊もホタテだ。
肉や魚の付け合わせに野菜、ではなく、その逆。
野菜の付け合わせに魚介類が用いられている。
Pork / oysters / parsley
メイン。豚のロースト。上に載っているのは蕪かな。
メインと呼んでいいのかわからないくらい少なく、軽い。豚はマリネしてから火を通されているのか、わずかに甘酸っぱい。主役は肉というよりは上の蕪であり、添えられたパセリの濃い緑色だ。
Cucumber / white chocolate / mint
プレデザート。キュウリのアイス、ホワイトチョコレート、マリネしたキュウリ
キュウリも瓜なのだから甘くしてもおいしいのね。スイカに似てくるのは驚きだった。
サイドのホワイトチョコの甘みはぎりぎりまで減らして、瓜の香りを消さないようにしている。
これはプレデセールにぴったりの、味があちこちに拡散していかない印象的な味だった。
Lemon / caramel / sorrel
デセールはレモンのアイス。青りんご風味。下のグレーの破片はたぶんチョコレート、をさくさくに加工してある。
ものの形がなくて味の印象だけが残る。
写真からは料理の精度の高さと、エッジの効いた味付けの見た目と、フランス料理寄りの穏やかさを想像していたら…違った。かなり違った。
どうも、食材の色が淡いのと味には相関がなかったらしい。
淡い味の主役に濃い味の脇役、白い食材に黒い皿、野菜が主役で付け合わせに肉魚と、一般的なセオリーを反転しことごとく逆張りしてるのも意外性を生んでいる。
塩気が強めに感じるものと、そうでないものを意識的に分けている感じだ。
塩を、酸味を、ここぞというところに使う。
全体的に、このあとのnomaなどと比べて、料理のパーツごとの味付けはシンプルだ。シンプルなパーツの思いがけない組み合わせで料理ができている。
シンプルなパーツを、複雑に組み合わせる。
その組み合わせ方が、Kokkerietのオリジナリティということなのだろう。
Kokkeriet
Kronprinsessegade 64, 1306 Copenhagen
Phone: +45 33 15 27 77
日休。営業は夜のみ。予約は→こちら。