(1)はこちらをご覧下さい。
ゲラニウム、予約は7時半。
当初は6時半だったのですが、ランチを少しでも消化したいと思い、8時に遅らせたいと当日電話を入れたところ、
「7時半にしてもらえるとすごく有難いんだけど」
と言われたらしい。
8時じゃ遅すぎるということかな?と、指定の7時半に行ったらすでに満席。
えー。まだ外も明るいし、こんな時間にもう満席かい。
ここ数日、ディナーに行っても8時半じゃ誰も来てないよジャパニーズ、に慣れていた私たちは、スペイン時間にまだ毒されているらしかったです(笑)
コースは二択。アラカルトはありません。
OUR MENU(1048DKK;約15,665円)と
OUR GREEN MENU(848DKK)。
(2011.8現在。1デンマーククローネ14.95円で計算)
シェフのラスムス・コフォード氏は月に2、3回しか魚・肉を食してないとのことで、Green Menuがあるのも納得。Greenの方は基本的にベジタリアンメニューでした。
ワインペアリング(1048DKK)とジュースペアリング(!)(498DKK)があり。
ジュースって初めて見ました。ジュースの内容は書いてなくて出たトコ勝負。興味あったけど、値段も値段だし、怖くて頼めねっすよ。
食前酒のメニューに、アップルジュースが、年度もいろいろで凝った数種類、平均200DKKなのを見てびっくり。他の飲み物は想像できる普通のお値段なのですよ。
このお店の、ジュースにかける半端ない姿勢がほの見えた次第です。
OUR MENU
CARROT&SEABUCKTHORN
POTATO CHIPS&SEAWEED
RAZOR CRAMS
KING CRAB&SALTED CHEESE
COLD TOMATO JUICE,WILD FLOWERS&GELLED HAM
PICKELD CUCUMBER”FLAVORS OF THE SEA”
SALTED MACKEREL,FROZEN DILL&HORSERADISH
GRAINS&ONIONS IN TWO SERVINGS
LIGHTLY SMOAKED PEAS”POTATOE SOUP”&LOVAGE
LANGUSTINE,BEET ROOTS CHERRY VINEGAR&HAZELNUT OIL
CHICKEN FROM SODAMGARD WILD MUSTARD,SOUR PLUMS&MUSTARD SEEDS
RASBERRIES&ROSE HIPS
CHERVIL,GREEN MATTERS,WHITE CHOCOLATE
SHEEP MILK YOUGHURT PICKELD ELDERFROWERS&BLUEBERRIES
“GREEN SPHERES”,CARAMEL&PINE
“SALTY LIQUORICE”
ノルディックモダンのレストラン、私は2010年に行った2軒(コペンハーゲン郊外「Soelleroed Kro (ソレロッド・クロ)」と、マルメにあった「Trio(トリオ)」記事はこちら)しか経験がないのでこれが3軒め。
おおざっぱに言えば、新鮮な魚介類、彩度の高い素材の色遣い、繊細な味付け、という共通項があり、今回もその路線ではありましたが、やはりラスムスの料理は才気ばしばしですねー。
ラスムスは今年(2011)のボキューズドールで優勝していますが、料理の「新しさ」を前面に押し出した「光った」ものが多かったです。
(すごく意地悪く言えば、とてもわかりやすく)光りすぎてて、コースの中でも、
これ、アイデアありきであとからつじつま合わせたでしょー
的な才気先行の料理もないではなかったけど、味が破綻しているものはなかった。
フランスにも、スペインにもない料理であることは確かです。
「COLD TOMATO JUICE,WILD FLOWERS&GELLED HAM」
お店のHPや柴田書店の「スペシャリテ2011」(ブログ内記事はこちら)などにも載った有名なこれも、まず視覚的に美しい。
でも食べるとけっこう見た目と味のギャップに驚きます。
卵白の泡は味の想像つくけど、下の部分は、透明なトマトジュレとだしにハムを使ったスープ、透明だから見ただけではわからないけれど、見た目より味は肉!です。
清楚な見た目と結構ギャップがある。
どうも透明な色にだまされてしまうんですよね。
日本語でも「透明感」というと、はかない、清楚な、清浄な…というような共通のある「イメージ」があると思うのですが、その固定観念は、口に入れるとひっくり返されるわけです。
それから、同じように見えて複数の調理法、というのもありました。
「GRAINS&ONIONS IN TWO SERVINGS」
玉ねぎが出色。
こんな小さな玉なのに、なんでこんなにうまいんだろう。
甘味を引き出したロースト玉ねぎと、軽くマリネされた玉ねぎ。
北欧はマリネが得意な国らしく、マリネといえば数種類を使い分けるそうで、翌日行ったスモーブローのお店も、何が美味しいって、サーモンよりも玉ねぎのマリネだった。
ソースは鶏をひたすら煮詰めた系。ジャンルは違うけど、以前ヘイフンテラス(東京の方)で食べたことある鶏のスープに似ていた。あれも濃厚にクリーミーだけど、クリームは使っていなかった。
「SHEEP MILK YOUGHURT PICKELD ELDERFROWERS&BLUEBERRIES」
エルダーフラワーの香りが清楚な感じのデザート。
下の2粒の白い玉、見た目は区別がつかないのに、食べてみるとそれぞれ中身が違いました。
チーズの玉(冷たくない)とヨーグルトアイスクリーム(当然、冷たい)。
ブルーベリーも乾燥ブルーベリーとフレッシュブルーベリーで味と食感が全然違う(芸コマ!)
ちなみに、キッチンはオープンです。(後ろにボキューズドールのトロフィーが3台飾ってある…)
(右端に映っているのがシェフです。左の料理人氏に重なるようにトロフィーがちらっと見えます。)
時間中は、全10人くらいの料理人が見えましたが、ラスムスと一人二人の料理人がひたすら盛りつけ。
客席へのサーブは、サービスの人が持ってくることもあれば、料理人や、ラスムスシェフ本人が持ってくることもある。
全部で10卓程度、フルで入って40人くらい。外国人客もちらほら。アジア人客はその日は私たちだけでした。
サービスはみんな若く(ってシェフも若いし)笑顔に溢れ、きびきびしてますねー。礼儀正しい。
みんながすべてのテーブルを見ていて、連携がよくとれてる感じ。スペインのようなフレンドリーさもほしい気がするけど、これは贅沢かな。
サービスはアジア系の人が多かった。1/3か半分くらい?
こんなにアジア人が多いなら日本人いるかな?と思ったらみんな違った。けっこう意外。
ノルディックモダンの料理は、ラテンの人々の食の対極にあるように見えます。
ラテンは食べるために生きるというか、食の快楽、楽しさ、一歩進むと退廃…おおざっぱに言うと。
それに対して、こちらは禁欲性、清潔感、緊張感、清楚さ…のようなものと親和性がある。
これらは、食の本質とは基本的に相容れない思想のように思います。
それを食と結びつけてこのように成立できているところはポストモダンなんだろうなと思うし、
その思想の意外性が、ラスムスの才気とも相まって、とても楽しめる世界を作っていると思いました。
◆Geranium
Per Henrik Lings Alle4,8 2100 Copenhagen O
tel +45-6996-0020
http://www.geranium.dk/
お店へのアクセスはこちらをごらん下さい。
再びです(笑)。この手の料理の場合、スペインもそうですが、肉料理が余りに貧相ではありませんか?赤ワインとは一緒にはとても食せないタイプの・・。1時間後には空腹感を感じ始める料理と言うか・・・。繊細な感じは十分すぎる程伝わるのですが、私は余りに繊細過ぎる食事に魅力は感じません。特にメインでガッカリするのがあたり相場な、最近の“モダン・キュイジーヌ”とか言われるスタイルですね。
因みにスペインで関心するメインの肉料理には未だに出会っていません。カンロカも肉料理までは圧倒的な素晴らしさだったので期待の地平がかなり高かったのですが、出てきたのはミートローフの様なレベル、と仔羊の肩をパリパリに焼いた味気のないもの。これ、未だにメインを張っているそうです(笑)。
やっぱりトータルで見ると、フランス料理の王座を揺るがすレベルには無いような気がします。北欧には未だに行ったことがありませんので、スペインを経由した想像でしかありませんが。
山本聖司
おっしゃることはよくわかります。肉料理が貧相だと、最後にちゃんと食べた気がしないものです。このような料理が、料理人のための料理だと批判されたこともありましたね。
ノルディックモダンの料理は、どちらかというと、肉料理よりは、海産物や野菜の素材の良さが評価を受けているように思います。コースの最後が肉を食べるクライマックスでなければならないというのも考え方の一つであって、問い直してもよいのではないかという発想もあるかもしれません。
スペインでも、アサドールに行けば、炭火で焼いた肉をしっかり頂ける楽しさが味わえるのではと思います。
なるほど・・・肉が食事のクライマックスである必要がない。どうしてもフランス料理をやっていると、その考えに凝り固まっちゃうんですよね(笑)。
仰る通りで、日本料理の高級店ではそもそも米(食事)がメインですし、その発想は面白いです。
スペインはサンセバの「エル・カノ」の巨大なヒラメの炭火焼が強烈に印象に残っています。レモンとニンニクのビネグレットを振りながら炙り焼いただけでしたが、過去最高の魚料理でした。