《レビュー》クスクスの謎 人と人をつなげる粒パスタの魅力

クスクスの謎―人と人をつなげる粒パスタの魅力 (平凡社新書)
にむら じゅんこ
平凡社
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「クスクスの謎 人と人をつなげる粒パスタの魅力」
(にむらじゅんこ著、平凡社新書)

フランス料理店やイタリア料理店で出されることもあるけれど、それ以外では数少ないモロッコ料理店などでしか日本ではお目にかかれないクスクスについて、10年以上在仏の著者による「一冊全部クスクス」な本。
著者自身の思い出から来るクスクスへの偏愛と呼んでも良いような愛情が本書に説得力を与えています。

クスクスは北アフリカ発祥とされているとのことですが、その起源は諸説あり、紀元前から食べられていたとのこと。

パリで80年代以降「クスクスはフランスの国民食」と呼ばれるほど普及した経緯について、ファストフードに押されて手離されていったパリのカフェを引き継いだのが、かつてギャルソンとして働いていたアルジェリアのベルベル人であり、そこからクスクスがカフェの定番メニューとして登場してきたと書かれています。

北アフリカのイスラム圏では、金曜日は休息日として、貧しい人たちにクスクス鍋を持って配って歩く人の姿が見られるほど、クスクスは分かち合って食べる料理であったというくだりは興味深いものでした。

丸焼きの鳥や魚など、部位によって味が異なるものを家族などで分ける場合、家長が良いところを取るなど、権威と結びついているものが、クスクスは食べる場所で味が変わらないことから、「食の不公平がない料理」の一つだと書かれています。
日本の「一つ鍋をつつく」を援用するあたりがもうちょっと読みたかった気もしますが、日本であまり触れられることの少ない食文化について考えさせられる本でした。

クスクスのヴァリエーションとして、マグレブ系、ブラジル系、アフリカ系、マシュリク系、イタリア系、フランス系と詳細に一章を割いている部分も必見です。

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