徳吉洋二さんの料理イベント(Tirpse) 完成を待つもの      (新店名追記あり)

【2015.9追記】ミラノのお店に行ってきました。訪問記はこちらから↓
TOKUYOSHI(ミラノ)Cucina Italiana Contaminata

——
先日、都内で、イタリアのオステリア・フランチェスカーナでスーシェフを務めていた徳吉洋二さんの料理フェアが行われた。

2014-10-09-20-00-45

洋二さんの略歴は、先日刊行された『なぜ、日本人シェフは世界で勝負できたのか』(本田直之著・ダイヤモンド社)に詳しい。
つてもなくイタリアに料理修業に渡り、働きたいとレストランに電話をかけ続け、諦めて帰りの飛行機に乗る直前に買った「エスプレッソ」で見たモデナのオステリア・フランチェスカーナにかけた電話で「明日から来い」と言われ、航空券を破り捨ててその日のうちに店へ向かったという。以後1ヶ月でスーシェフとなり、昨年12月に退職するまで、Massimo Botturaシェフの右腕として、世界を飛び回るカリスマシェフを支えた。その実力が認められ、今では洋二さん自身がイタリアのメディアに登場することも多い。

今回は、食器がすべて佐賀県の有田焼で、今回このフェアのために、5軒の窯元(徳幸窯、福珠窯、福泉窯、やま平窯元、李荘窯業所)がそれぞれ料理に合わせた器を作成し提供していた。用意された解説によると、洋二さんと窯元が、SNS上のディスカッションで作成したらしい。
たったふた晩、合計50人のお客さんのためにお皿までデザインするというぜいたくな試みだ。

2014-10-09-19-35-27

メニューは全8品。今回の2日間のための料理には、すべて日本語とイタリア語の名前がついている。

MENU
1.Apunto in bianco una zuppa tiepida
いきなり暖かいスープ

2.Croccabte Pesce
魚はあるが形は無い・魚はあるが魚では無い

2014-10-09-20-02-01

3.Insalata di mare
陸・海・空

2014-10-09-20-22-03

4.Spaghetti di patate
ジャガイモのスパゲッティ

5.Risotto al parmigiano…Indeciso
パルメザンチーズのリゾット 3種の決めにくいソース

6.Piccione alla Giriglia
鳩 グリル味

7.Glaciale
氷河

8.Monte Rosa
モンテローザ

ーーーーーー

2014-10-09-20-56-03

このジャガイモのスパゲッティは、具が、ではなく、スパゲッティがジャガイモというひと品。ジャガイモをパスタマシンにかけたのだという。しゃきしゃきの食感にソースがよくからむ。

このソース、ジャガイモの皮をローストしたものをブイヨンでのばして、ガーリックとローズマリーで香りをつけている。このソースの味が突き抜けている。明らかに、ソースとトリュフが主役でスパゲッティはわき役である。
この皮の、ぼくとつな土着の感じと、繊細な香りをもつアルバの白トリュフが、どちらも土から出てきたもの同士、皿の上で同居している。白トリュフは空輸されてきたばかりだからなのか、食後も香りが身体から匂い立つほどだ。

2014-10-09-19-53-34

鳩は、火入れもさることながら、付け合わせのネギとオイルソースの香りが印象的だ。
鳩は低温調理で加熱し、ソースとなるオリーブオイルに加熱した備長炭を入れて、グリル感を追加したのだという。

2014-10-09-21-42-49

ところでこのメインで、料理よりもっと印象的なのはこの皿だろう。割れた皿をイメージして作製されているそうだ。

割れた皿や、こわれたもの、完成していないもののイメージは、オステリア・フランチェスカーナの料理にもいくつかあった。

私がフランチェスカーナで以前食べた「ブロークンタルト」。タルトが割れた一瞬が、皿の上に表現されていた。ほかにも、日本語の題は洋二さんが名付けたのだろう「トリュフになりたかった芋」というドルチェもあって、芋がトリュフになろうとしている瞬間を表現したものだったそうだ。

2012-04-30-17-12-16

ブロークンタルト(@Osteria Francescana)

今回出た前菜の「魚はあるが形は無い・魚はあるが魚では無い」もそうだが、フランチェスカーナの料理、ひいては今回の洋二さんの料理には、バロックなもの、まだ完成途上のもの、変化してゆくものを、料理の形としてとどめたいという意思が感じられる。それは、写真で人物や風景の一瞬をとらえる行為に似ている。

隙のない円ではなく欠けているまま、あるいはゆがんだ自然の形のまま、そのままで料理にとどめようとするのは、すぐれて日本的な発想方法だと思える。
そのような意識が、洋二さんの、日本人でありながら、今後もイタリアの地で料理を作っていくというアイデンティティを、底の部分で支えていくのかもしれないと思った。

洋二さんの新しい店は、12月下旬ごろに、ミラノでオープン予定とのこと。↓【店名追記】

2014-10-09-20-55-31

【追記】
新しい店の名前は「RISTORANTE TOKUYOSHI」→サイトはこちら
行ってきました(2015.9)→TOKUYOSHI(ミラノ)Cucina Italiana Contaminata
Via San Calocero N°3 — 20123 Milano,Itary
TEL+390284254626
火~土19:00~23:30
日12:30~15,19:00~23時30分
月曜休

コンセプトはCUCINA ITALIANA CONTAMINATA
洋二さんいわく「真っ当なクラシックな料理をアレンジし、どれだけ日本人的なスタイルに進化させられるか、しかし味は100%イタリアンという料理を目指していきたいです」とのこと。

↓(2015.6追記)
専門料理7月号は洋二さんの紹介6ページ。

投稿を作成しました 166

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連投稿

検索語を上に入力し、 Enter キーを押して検索します。キャンセルするには ESC を押してください。

トップに戻る