昨年2月の荒井シェフ・高田シェフのコラボの記事は→こちら
11月2日と3日、2日間にわたり、浅草「Hommage」で、「La Cime」高田裕介シェフの料理フェアが行われた。
最近多くなったこのようなフェアやコラボイベント。シェフにとって、作るときの不自由さがあることは想像にかたくないけれど、それでも、作り手の視点が変わることにより受けるであろう刺激や発見を、食べることで共有したいという気持ちが勝る。そして今回のこの方にとっては、それこそ無用の心配。昨年のオマージュ荒井さんとのコラボと異なり、今回は高田さんお一人でのフェアだという。このような場を提供される荒井さんも太っ腹だ。
Menu
アミューズ
マカロン・ブーダンドッグ・安納芋・ジャンボンブラン・ピサラディエール
うなぎの燻製/春菊/青リンゴ/玄米のスフレ
アワビ/ラディッシュ/切り干し大根/キャプシーヌ
オマールブルー/カボチャ/芽キャベツ/メリッサ/ベアルネーズ
ヒラメ/ハチミツ/根セロリ/コンテ/花良治みかん/ジロール/白人参
ウサギ/ホタテ/銀杏/椎茸
ハト/フダンソウ/セルフィーユ/ハマグリ/骨髄
デザート
トマト/アーモンド
カシスモンブラン/ビーツ
お茶菓子
クラシックもモダンもなんでもござれ、その場の感覚で盛り付けの形も変わる高田さんの、今回のコースの主役はたぶんソース。
オマールブルー/カボチャ/芽キャベツ/メリッサ/ベアルネーズ
先日の「専門料理」11月号に掲載されていた高田さんの料理を思い出させる。フランス料理の古典である19世紀の料理人アントナン・カレームの料理を、高田さんが再解釈して現代にアレンジしたものだ。真っ赤なベアルネーズは、ビーツで色味が強調されてスパイシーそうな見た目だけれど、実際はオマール基調のまろやかな味だ。
人間の目は、見た目が濃いほど味が濃いと予想する習性がある。とても濃い味を想像して口に入れると、想像よりずっと淡いことに驚く。その、色と実際の味のギャップもきっと高田さんの計算のうちだろう。
アワビ/ラディッシュ/切り干し大根/キャプシーヌ
香りのギャップに驚かされたのはアワビ。ソース(スープ?)が切り干し大根のだしだ。香りもしっかり切り干し大根。この、高級食材と日常食材の取り合わせなのにぴったりとしか思えない組み合わせ、しかも味は完全にフランス料理になっているのはどんなマジックなのか。そして全部飲めてしまうソースの軽さは現代的。
このウナギ(隠れていますが)の前菜の春菊のソースも、色の濃さに反して味は淡く、ウナギの味の濃さ・くどさを中和するため(だけ)のソース。ソースと食材の役割が通常と逆だ。
カレームの料理を古書からひもとき、それを現代の料理として甦らせる。その書籍もフランス語の原書であり、所有者も少なくなっているという。
古典を生かすという高田さんの「志」と、現代に生かすだけでなく料理に驚きをもたらす発想力を今回も感じた。
高田シェフ(左)と荒井シェフ。
オマージュ (Hommage)
東京都台東区浅草4-10-5
03-3874-1552
月曜定休(火曜日不定休)
La Cime
大阪市中央区瓦町3-2-15 本町河野ビル1F
tel./fax.06-6222-2010
日曜定休