2月21日、タイ・バンコクでアジアのベストレストラン50の結果が発表された。
「世界のベストレストラン 50」の一部としてアジアでのランキングが始まったのが2013年なので、今年で5回目だ。
今年の結果の概要をざっくりおさらい。
・今年のアジア1位は、3年連続、バンコクのGaggan。
・日本勢は6位のNARISAWAをトップに9軒。以下、龍吟(7位)、傳(同11)、レフェルベソンス(12)、フロリレージュ(新・14)、カンテサンス(18)、鮨さいとう(26)、Hajime(34)、タカザワ(50)。
フロリレージュは昨年、注目のレストラン賞「One to Watch」に選ばれていたので、入賞はいわば規定路線かと。
傳はホスピタリティ賞も同時受賞。
・最優秀パティシエ賞は、エスキスサンクの成田一世氏。
日本人の受賞は、2015年の杉野英実氏以来。
・50位までの国別の軒数は、昨年より1ヶ国減って12の国と地域となった。
サンペレグリノの公式サイトには「日本とタイとシンガポールの軒数が多い」(各9軒)とあるが、香港7軒、台湾3軒、中国本土2軒、マカオ2軒をひっくるめると、中国の軒数はそれら3ヶ国より多くなる。
50位までのリストは公式サイトにも出ているので、ここでは、国と地域別に並べてみた。
Asia’s 50 Best Restaurants 2017 The Full List
——-タイ 9軒——-
1. GAGGAN(Bangkok, Thailand) →
5. NAHM(Bangkok, Thailand) ↑
13. SUHRING – Bangkok, Thailand) N
19. BO.LAN(Bangkok, Thailand) N(復活)
21. ISSAYA SIAMESE CLUB(Bangkok, Thailand) ↓
31. EAT ME(Bangkok, Thailand) ↓
36. THE HOUSE OF SATHORN(Bangkok, Thailand) N
37. LE DU(Bangkok, Thailand) N
40. L’ATELIER DE JOËL ROBUCHON(Bangkok, Thailand)N
——-シンガポール 9軒——-
2. RESTAURANT ANDRÉ(Singapore) ↑
9. ODETTE(Singapore) N
10. BURNT ENDS(Singapore) ↑
16. LES AMIS(Singapore) ↓
20. WAKU GHIN(Singapore) ↓
23. CORNER HOUSE(Singapore) ↓
27. TIPPLING CLUB(Singapore) ↑
42. JAAN(Singapore) ↓
44. SHINJI BY KANESAKA(Singapore) ↓
——-香港 7軒——-
3. AMBER(Hong Kong, China) ↑
4. 8 1/2 OTTO E MEZZO BOMBANA(Hong Kong, China)↑
17. LUNG KING HEEN 龍景軒(Hong Kong, China) ↓
33. TA VIE(Hong Kong, China) ↑
41. L’ATELIER DE JOËL ROBUCHON(Hong Kong, China)↓
45. RONIN(Hong Kong, China) N
47. THE CHAIRMAN 大班樓(Hong Kong, China) ↓
——-日本 9軒——-
6. NARISAWA(東京) ↓
7. 日本料理 龍吟(東京) ↓
11. 傳(東京) | The Art of Hospitality Award ↑
12. L’EFFERVESCENCE(東京) ↑
14. FLORILEGE(東京) N
18. QUINTESSENCE(東京) ↑
26. 鮨 さいとう(東京) →
34. HAJIME(大阪) ↓
50. TAKAZAWA(東京) ↓
——-中国本土 2軒——-
8. ULTRAVIOLET BY PAUL PAIRET(Shanghai, China)↓
48. FU HE HUI 福和慧(Shanghai, China) ↓
——-韓国 3軒——-
15. MINGLES(Seoul, Korea) →
25. JUNGSIK(Seoul, Korea) ↓
38. LA YEON(Seoul, South Korea) ↑
——-インドネシア 1軒——-
22. LOCAVORE(Bali, Indonesia)Highest Climber Award↑
——-台湾 3軒——-
24. RAW(Taipei, Taiwan) ↑
28. LE MOÛT(Taichung, Taiwan) ↑
43. MUME(Taipei, Taiwan) N
——-スリランカ 2軒——-
29. MINISTRY OF CRAB(Colombo, Sri Lanka) ↓
49. NIHONBASHI(Colombo, Sri Lanka) ↓
——-インド 2軒——-
30. INDIAN ACCENT(New Delhi, India) ↓
46. WASABI BY MORIMOTO(Mumbai, India) ↑
——-マカオ 2軒——-
32. JADE DRAGON(Macau, China) N
39. THE TASTING ROOM BY Galliot (Macau, China)N
——-フィリピン 1軒——-
35. GALLERY VASK(Manila, Philippines) ↑
ちなみに、昨年2016年のアジアベスト50の国別軒数。
タイ 4軒
シンガポール 10
香港 9
日本 10
中国本土 3
韓国 3
台湾 2
スリランカ 2
インド 3
フィリピン、カンボジア、インドネシア、マカオ 各1
今年と比べて気づくのは、タイのランクインの軒数の倍増だ。
今年新たにランクインした12軒(復活も含む)のうち、5軒がタイのレストランなのだ。
昨年からランク外になったのは、この11軒かな。
28. MR AND MRS BUND – Shanghai, China
31. La Maison De La Nature Goh – Fukuoka, Japan
33. TENKU RYUGIN 天空龍吟 – Hong Kong, China
34. FOOK LAM MOON 福臨門 – Hong Kong, China
35. ROBUCHON AU DÔME – Macau, China
36. IGGY’S – Singapore
38. WILD ROCKET – Singapore
41. BO INNOVATION – Hong Kong, China
42. KIKUNOI 菊の井 – Kyoto, Japan
43. CUISINE WAT DAMNAK – Siem Reap, Cambodia
45. BUKHARA – New Delhi, India
順位が「味の良い」順位でないことはいうまでもない。
過去18ヶ月で審査員がどれくらい訪れたかが、得点の指標となるからだ。
つまりは、審査員のあいだで話題にならない、あるいは訪れる機会の少ない店は、上位に上がって来にくい。
このランキングに入るには、①シェフが社交的で、②SNS使いに長けていて、③英語もできればなお良く、④審査員にお店に来てもらわなければ始まらない…(しかも18ヶ月に最低1回は!)となると、良い料理を作り続けていればよかった時代と違い、求められる料理も「良いもの」よりも「新しいもの」、「話題性のあるもの」になるわけで、そんなのが得意な人はいいけど、難儀な時代になったなと思っている人は多いだろうなと思う。
しかし、ミシュランが2007年に東京に上陸してから後は、それまでの評価が、長くやっている店、料理人さんの年功序列的なものがそのままレストランの評価だったものがいったんガラガラポンになった、あそこから大きく流れが変わった、という話を聞いたことがある。中の人たちの実感としてはそうなのだろう。
ベストレストラン50の評価で、その流れはさらに加速している。
Gagganだって、もし、各国から直行便が就航する大都市バンコクでない別の国にあったら、事情は変わっていたかもしれない。
2020年の福岡への移転が噂されているが、どうなるだろう。
まだ行ったことのない国は、おいしい店のガイドとして。
すでによく知っている国は、おいしい店はほかにもあるよという宣伝を、自分のできる範囲でやっていくきっかけとして使っていければ。
Gagganの1位決定後、壇上に呼び寄せられる傳の長谷川さん(右から2人目)と、フロリレージュの川手寛康さん(左端)。