「それがないと行くことがなかった場所」というのがある。
言いかえれば、その何かがその土地へ導くというような。
それは距離を問わない。隣の県であっても「それ」を目指して向かっているとき、その道程はすべて旅なんだと思う。
今回の「それ」は”牛”だった。
「バスクから南に下ったところに、Passage53の佐藤伸一さんが年に数回通うチュレタのうまい店がある」
という言葉を頼りに私たちがたどり着いたのは、山の中の街の川沿いの小さな店だ。
今回のCasa Julian(カーサ ジュリアン フリアンとも)のあるTolosa(トロサ)は、サンセバスチャンから南へ下ること約45分の山中にある。
トロサの名前の語源は、フランスの都市トゥールーズ(ラテン語・オック語だとTolosa トローサとなるらしい)。1256年、カスティーリャ王アルフォンソ10世が憲章を与えトローサを建設したという。
wikiによると、新しい土地の名前として、すでにある高名な地名をつけるという慣習があったらしい。
ちなみにトロサの名物食材には、トロサ豆がある。
小豆に似た黒い豆で、トロサ豆の煮込みはスペイン料理店でときどき見かけるメニューだ。
黒豆の産地というと、丹波の篠山…というフレーズが頭をよぎる。
四方を山に囲まれ、湿度が高いというのは共通点かもしれない。
今回の注文
Jamon Iberico(ハモンイベリコ)
Esparragos(ホワイトアスパラ)
Pimentos(ピーマン)
Chuleton de viejo(熟成牛ロース)
これで合計約100ユーロ。
チュレタの注文は重量単位、今回は1kgなので、4人の注文としては少なめだ。普通だとひとり500gくらいが標準かも(骨があるので)。
メニュー自体も、ハモン3種類、野菜3種類、チュレタ4種類の全10種類くらいしかない。
あとはワイン。棚には歴史を感じさせるワインのボトルがびっしり。50年以上前のもあるようだったがさすがにこれらは飲めないらしい。
ここはひたすら肉食いの場所である、と知る。
ハモンイベリコ。
ねっとり感があり、薄いのに肉感的な、凄みのあるハモンだ。
一瞬で皿から消え去る。
ホワイトアスパラ。
水煮でわずかな塩味のみ。さっくり柔らかい。
このあたりで私たちの肉とおぼしき肉が店の片隅の網に載せられる。
岩塩の量がすごい。振るというものではなく、上が塩で真っ白になるほど載せてある。
肉と炭の距離がけっこうある。火力は強く、炭ががんがん燃えている時間は熱くて近寄れないほどだ。
チュレタの塊を切り分ける。
切ってみると、レアでサシがほとんどないのに、肉の繊細な味が迫ってくる。
気がついたら、あの肉の上の大量の塩はほとんどなくなって、ちょうどの塩加減になっているのも驚いた。
ここまでストイックに肉しかないアサドールは、私自身(エチェバリを除いて)今回がほぼ初めてだったが、ここもElkano同様、長年一つのことをつきつめてきた凄みのようなものが感じられた。
付け合せのピーマンのグリルもぜひ。
マリネしたものを焼いてあるようだった。
グリルするとここまで甘みが出るのかと思った。
ここまで甘みが感じられるピーマン、次はいつ食べられるだろう。
ちなみに、行った人の記事のなかに、Casa Julianと川を挟んで対岸にあるCasa Nicolasも良かったという記述があった。
次回はこちらにも行ってみたい。
入り口にあった、スペインの著名なシェフたちとの交流を垣間見させる写真。
Casa Julian
公式サイト→こちら
Tel 943 67 14 17
Santa Clara 6,Tolosa,Spain
サイトを見ると、マドリッドにも姉妹店があるようです。
予約は電話のみ。