パリでどん底に落ちたミシュラン2つ星の日本人シェフが、再起をかけて東京で新しいレストランを立ち上げ、自分だけの星をつかむまで。全11話(2019.10~12)、TBS系の連続ドラマ。
第1話のパリロケがミシュラン3つ星のランブロワジーで行われたことで話題になった。
同店がロケに使われるのは店始まってこれまで1度しかなかったとのこと。
実際にふたを開けてみればパリロケ部分以外でも、物語のリアリティから、フランス料理業界の中の人たちからも注目が集まるドラマとなった。
視聴率も全回10%超、第10話までの最高視聴率は第9話の14.7%で、全体的にはまずまずという数字らしい。
私自身は、第1回、2回あたりは、冷やかし半分でテレビを見ながら思いついた解説をツイッターに随時流していたのだが、途中からフランス料理やレストラン業界、ミシュラン関連の内容を加えながら流していく形に変え、毎週放映後に腰を据えてTverでドラマを見直すことになった。
自分なりに1話ごとにテーマを拾い、それを軸に10ツイートずつくらいにまとめていった。
10月20日に始まったこのドラマも、いよいよ12月29日に最終回を迎える。
このドラマの特徴のひとつは、前クールのラグビーを扱った「ノーサイド・ゲーム」もそうだったが、フィクションの中に現実のイベントや出来事を盛り込み、リアリティを出したことだと思う。
まずドラマの会期中に、実際のミシュラン東京2020年版の発表があった。
この時期にドラマの放映を当てて、現実とのリンク感をより強める結果になったのは、制作側では計算していたのではないかと思う。
ライバル店を監修していたINUAが、新規で2つ星を取ったのも話題になった。
ミシュランの3つ星が究極の目標とされているドラマであるため、最終回は主人公たちが作り上げた店「グランメゾン東京」が星を取れるかどうかが焦点になっていると思われる。
私は機会を得て、期間中にカンテサンスとINUAの両方に訪問することになったが、ドラマで作られた料理が、この時期両店とも実際に目の前に出てきたのには驚いた。
これまでのあらすじと解説を、Twitterに投稿した内容とあわせて以下にまとめた。
各回の内容は、下記リンクからスレッド形式になっていて、それぞれたどれるようになっている。
グランメゾン東京 公式サイト(TBS)→https://www.tbs.co.jp/grandmaisontokyo/
第1話 手長エビのエチュベ
パリで主人公の倫子と尾花が出会う。ライバル店「gaku」の紹介。
サービスの京野がチームに加わる。
始まったでござる#グランメゾン東京 pic.twitter.com/NmwiNH9qoX
— うずら🐈モダスパ+plusの中の人 (@caille2006) October 20, 2019
第2話 ナスのプレッセ
倫子と尾花が東京でレストランを作るべく資金面で奔走する。
食材を日本国内から調達するというコンセプトと「グランメゾン東京」という店名が決まる。
(グランメゾン東京の料理監修はカンテサンス)
「日本は食材の質が高いんだ。魚介類の鮮度が良くて寿司屋がゴロゴロある日本のフレンチで刺身出せってか」
wwwww
良いねえ〜
日本の食材の質と日本人の味覚。いずれもフランス料理を日本で出すとき避けて通れない問題。いまの日本のフランス料理の問題点よく調べてるwww #グランメゾン東京— うずら🐈モダスパ+plusの中の人 (@caille2006) October 27, 2019
第3話 鹿肉のロティとコンソメ
「グランメゾン東京」開業にめどがつく。
料理コンクールのジビエ料理でライバル店「gaku」と戦う。
(gakuの料理監修はINUA、ロケ地は代官山のポール・ボキューズ)
血液を同じタンパク質を持つ卵白の代わりにコンソメの吸着に使った話。鹿の血液を卵白の代替として使って有名なのがラチュレ(南青山)の鹿の血のマカロン。コースの最初に必ず出るひと品。中のブーダンノアールも鹿の血で作っている。野性味と甘いショコラは合う。 #グランメゾン東京 pic.twitter.com/477Vjqmd2x
— うずら🐈モダスパ+plusの中の人 (@caille2006) November 3, 2019
第4話 モンブランアマファソン
デザート担当・萌絵がチームに加わる。
料理人の才能とセンスと努力の問題について。
第4話
料理監修のカンテサンスそのままのコース。山羊乳のババロアやメレンゲのアイスなどスペシャリテが入ってて胸熱。山羊乳のババロアは開業(2006年5月)当初から。ドラマにあった、最初に真っ白いカルトブランシュを出すのも同じ。
←今日、ドラマで映ったババロア
06年9月訪問時のババロア→ pic.twitter.com/BEV01MWu8U— うずら🐈モダスパ+plusの中の人 (@caille2006) November 10, 2019
第5話 アッシパルマンティエ
「グランメゾン東京」オープン。開業早々店が立ち行かなくなり、フードフェスでカレーを売る。
料理人がお互いの才能をどのように見ているかについて。
第5話 #グランメゾン東京
今回のテーマ「アッシパルマンティエ」。アッシとは細かく刻むこと。こちらのページが詳しかったのでどうぞ。https://t.co/hSuyQOE14g
パルマンティエはフランスにジャガイモを食用とすることを広めた人物。— うずら🐈モダスパ+plusの中の人 (@caille2006) November 17, 2019
第6話 鰆のロースト、水晶文旦のソース
アルバイト・芹田の回。
ミシュラン発表の前哨戦としてベストレストラン50ならぬ「トップレストラン50」が発表される。
努力を認めてもらえないときにどう乗り越えるか。誰のために料理をするか。
第6話#グランメゾン東京 の今回の料理。
数日前、カンテサンスでいただきました。
鰆のロースト 水晶文旦のソースと、
牛の胃袋のグリル。
公式サイトには番組オリジナルとされていますが、いまほぼ同じ料理をカンテサンスで出しています。記憶に新しいので食べた人間の立場から補足を。→ pic.twitter.com/BpQDOW7q2Y— うずら🐈モダスパ+plusの中の人 (@caille2006) November 24, 2019
第7話 ガレットシャンピニオン
スタッフ・相沢の回。
仕事と子育ての両立について。
また、2軒の店の料理の方向性が改めて視聴者に印象付けられる。
第7話 #グランメゾン東京
今回の料理的見どころのひとつは、gakuの厨房から見る2軒の料理の違い。今回は2軒の店の料理の方向性が改めて視聴者に印象付けられる。これは現実にそれぞれの料理監修をするカンテサンスとinuaのそれと同じで、いまのレストランの料理の大きな流れとそれぞれ重なる。 pic.twitter.com/Z1mc7wMz57
— うずら🐈モダスパ+plusの中の人 (@caille2006) December 2, 2019
第8話 ビーフシチュー
尾花の師匠、洋食店のシェフ潮の回。
①料理人はどれだけゲストに寄り添えるか。
②病気と老い、それに伴う仕事へのモチベーションについて。
第8話 #グランメゾン東京
今回のテーマは2つ。
①料理人はどれだけゲストに寄り添えるか。
②病気と老い、それに伴う仕事へのモチベーションについて。①先週第7話では、家庭料理とレストランが対置されていたが、今週は、常連さんそれぞれの好みを知り尽くしている店とミシュランを狙う店。
— うずら🐈モダスパ+plusの中の人 (@caille2006) December 9, 2019
第9話 白子のポッシェ
栞奈がアルバイトから正式にソムリエールとして加わる。
①ワインペアリングと料理の関係
②栞奈の混入未遂事件
第9話 #グランメゾン東京
今回尾花がワインに合わせて作った前菜、先日カンテサンスで既に頂いてました。
栞奈が「香ばしいものを入れて苦味を強めればワインの甘さを引き立てられる」と言っていましたが、頂いたものにはピーカンナッツが入ってました。ドラマの答えは、現実の皿の上にすでにあった! pic.twitter.com/0bhg5tQvbu— うずら🐈モダスパ+plusの中の人 (@caille2006) December 16, 2019
第10話 キジバトのドゥミ・アンクルート
gakuにいた祥平がチームに加わる。
祥平の若者特有の罪悪感と自意識を崩す、大人としての尾花。
第10話 #グランメゾン東京
第9話で出た白子と蟹の内子の前菜、ピーカンナッツ入りましたね…
先週のツイをおさらいでもっかい貼っておきます(*´-`) https://t.co/BptJGLKRRW— うずら🐈モダスパ+plusの中の人 (@caille2006) December 22, 2019
第11話 マグロ(12月29日放映)
さすがテレビ、ドラマの影響はすぐに現実のレストランにあらわれた。
第10話のキジバトがテーマになった回の直後にはジビエ料理が得意な店に問い合わせが相次いだり、シカの料理がテーマだった回のあとはシカのオーダーが増えたりしているらしい。
実際にドラマを視聴しているシェフが多いのも驚いた。期間中にレストランで「見てます?」と尋ねたシェフ、全話でないにせよ、ほぼ全員が何らかの形で見ていたのは驚きだった。
今回のドラマの影響はそれだけでない。
最も大きな功績は上記のような金銭的効果ではなく、
①一般の人にもレストランの中にいる「人」への意識が向いたこと
②料理人一人ひとりの個性が料理にあらわれる様子が、ドラマでクローズアップされたこと
ではないかと思う。
ドラマが、料理人やそれをめぐる人たちの内面をリアルに描き込んでくれたおかげだ。
たとえその意識が一過性であっても、彼らが実際にレストランを訪れたときに、フィクションは現実と必ずつながるはずだ。
そして10年後、レストランで、このドラマを見て料理人を志したという若者に出会えればと思う。
かつての「料理の鉄人」のように。