2022年11月15日、東京ミシュランの16年目のセレクションが発表になりました。
対象地域は昨年と同じ、東京23区。
ミシュランタイヤ株式会社のプレスリリース
星獲得店 全店検索
※ミシュランの全店検索は、以前は有料会員(クラブミシュラン)のみのサービスでした。
一昨年ごろから、公式による無料の全店検索が整備され、書籍刊行後に起きた出来事への反映や修正などはこちらで随時対応されるようになりました。
これは、発信の主軸を紙からウェブにというミシュラン社のスタンスの変更ではないかと思います。
◆星のついた軒数(カッコ内は軒数昨年比)
3つ星 12(±0)
2つ星 39(-2)
1つ星 149(-1)
★★★新3つ星 なし
★★新2つ星 2軒
セザン
明寂
★新1つ星 16軒
茂幸
エラン
NéMo
江戸前鮨 英
愚直に
アマラントス
一平飯店
宇田津 鮨
寅黒
プルニエ
グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ
TOKi
銀座 志翠
八雲 うえず
鮨 一條
奥
◆新ビブグルマン
昨年は新規35軒でした。今年は38軒。
毎年それくらいの数の店の入れ替えをしているようです。
主なところでは(主に西洋系)…
イバイア
イル・バロンドーロ
クレイジー・ピザ アット スクエア
白金シェ・トモ ナチュラル キュイジーヌ
DA PEPI
ディアログ
トロムペット
ビストロ ヴィヴィエンヌ
ビストロ タツミ
モノビス
ラス
◆ミシュラングリーンスター
12軒
◆料理カテゴリ数
32(昨年-4)
◆個人賞
メンターシェフアワード
「神楽坂 石かわ」石川秀樹さん
※自身の仕事やキャリアが手本となる料理人に授与されます。
サービスアワード
「傳」長谷川えみさん
※サービスに対する情熱を讃える賞。
◆対象外・降格
★★★3つ星
異動なし
★★2つ星
(2つ星→対象外へ 1軒)
すし 㐂邑
(★2つ星→1つ星へ 3軒)
壽修
懐石 辻留
ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション
★1つ星
(1つ星→対象外へ 19軒)
19軒のうち、閉業によるものは2軒。
デンクシフロリは、昨年新規1つ星を獲得したものの、1年で対象外となりました。
デンクシフロリ
レザンファン ギャテ
阿佐ヶ谷バードランド(ビブグルマンへ)
春草
玄冶店 濱田家
寿こう
タパス モラキュラーバー
赤坂 いづみ
あざぶ 一期
麻布 六角
アルゴリズム
いち太
今福
鮨 すが弥
太月
七鳥目
花のれん 花楽(閉店)
ミモザ
ラッセ(閉店)
◆セザンと明寂が2つ星へ
2022年版で新規1つ星を獲得した「セザン」、わずか1年で2つ星に昇格となりました。
「明寂」は新規で2つ星。「明寂」はかつて「茶禅華」を3つ星に押し上げた林亮治氏がオーナーの店で、今年1つ星を獲得した「一平飯店」も林氏が手がけています。林氏の手腕が、多くの人に印象付けられました。
◆今年星が来るか個人的に注目していた店
「グッチ オステリア」(2021.11開業)、「アマラントス」(2021.10)、「NéMo」(2021.6)、「エラン」(2020.1)。
世界的著名なシェフ、イタリアのマッシモ・ボットゥーラ氏が出した「グッチ・オステリア」、「アジュール45」でずっと星を維持していた宮崎慎太郎さん・宮島由香里さんの「アマラントス」、カンテサンス出身の根本憲一さんの「NéMo」。
どれも、料理のクオリティ、前評判ともに順当な結果だと思いました。
「エラン」は昨年「なぜ星がつかないのだろう?」と書いた店でしたので、星がついて良かったです。
このあとの開業店――「アンフィクレス」(2021.11)、「トワヴィサージュ」(2022.4)、「アシッドブリアンツァ」(2022.6)、「マス」(2022.7)などの有力店についての評価は来年に持ち越しなのかもしれません。
◆ビブグルマン上限価格の撤廃
ビブグルマンの制限価格が今回から撤廃されたようです。
ビブグルマンの評価基準は、これまで
「良質な食材で丁寧に仕上げており、6,000円以下で楽しめる」
となっていて、それが今回は
「良質な食材で丁寧に仕上げている」
と変更されました。
京都・大阪版も同様に2023年版から価格の条件が入っていません。
ビブグルマンの価格が今回撤廃された理由は、これまで6,000円(2020年版まではサービス料、席料も込みで5000円)でずっと線を引き続けてきたことの、不都合の部分が大きくなったからではと思います。
たとえば、今年新たにビブグルマンに入った店のひとつに「ラス」があります。
「ラス」は今年で開業11年、コース5,500円という低価格が話題となった店でした(現在は6,600円)。
開業以来変わらず人気を保ち続けてきた店が、今さら? という感じもなくはありませんでした。
11年目のラスが今回初めてビブグルマンになったのは、価格の厳密な線を引くのをやめた結果、対象に入ってきたからではないかと思います。
価格で一律に線を引くといっても、たとえば消費税込みか、ドリンク込みか、価格優先のコース料理を評価すべきかどうか等の要素で容易に基準線を越える/越えないが変わります。
ある金額で厳格に線を引いてそれ以上の店を排除するよりも「だいたいそのあたりの価格で」という実質をとることに方針転換されたと考えれば納得がいきます。
◆英語の追加
今年から総評や店の住所表記に英語が追加となり、日本語・英語の両方併記となりました。
2008年のミシュラン東京初上陸から数年は、英語版と日本語版が出ていました。
編集のコストとしても、日本語圏以外の人たちへの訴求としても、これがより良い形ではないかと思います。
2022年の東京のフランス料理でのトピックスのひとつは、和歌山「オテル ド ヨシノ」シェフ手島純也さんの、京橋「シェ・イノ」への移籍だったと思います。
総料理長は古賀純二さんのまま変わりありませんが、和歌山ですでに1つ星を得ていた手島さんが料理長として入ることで、シェ・イノの料理の層が厚くなったことは疑いないでしょう。
シェ・イノはもう長いこと星から遠ざかっています。
来年はどうなるのでしょうか?
銀座レカン、北島亭、アピシウス、シェ・イノ、ラ・ブランシュ、モノリス等々。
なかには星を断ったと聞く店もあって真相はわかりませんが、これら歴史あるクラシックの名店が、軒並みずっと星から遠ざかっている、または星を獲得していないのは、やはり東京のクラシックフレンチは星へのハードルがモダンなそれより高いのでは? と思えます。
手島さんも、シェ・イノへの移籍にあたり、インタビューで「そもそも今のようなフランス料理をやっている時点で評価の対象にさえならないかもしれないけれど」と述べています。
「評価の対象にさえならないかもしれない」、その理由が「クラシックなフランス料理だから」であれば、ミシュラン東京が上陸して15年を超えて、そろそろ方針転換があっても良いのでは…と思います。
クラシックという呼び名が良くなければ手島さんいうところの「純フランス料理」、そろそろ評価軸が変わっても良い頃合いではないでしょうか。
今年は、コロナ禍での各種規制がほぼなくなり、海外からの入国時の隔離も求められなくなって、やっと市街にもレストランにも活気が戻ってきました。
長期休業で調査もままならなかった2020年。
緊急事態宣言が出ていた時期の方がそうでない時期より長かった2021年。
これまでの日常を取り戻すための試行錯誤だった2022年。
そのような困難ななかでレストランを守り料理の研鑽を続けたすべての人たちが、このような形で報われる姿を見られるのはありがたいことだと思います。
【タイトル】ミシュランガイド東京 2023
【発売日】2022年11月18日(金)
【定価】3,498円(本体3,180円+税10%)
【ISBNコード】 978-4-904337-44-8 C2026
【発行】日本ミシュランタイヤ株式会社
【判型】A5 変形
【言語】日本語・英語
2022年版の感想