台湾に年に数回出かけるようになって、15年くらいになる。
目的は主に中国茶の買い出し。
美しい所作で淹れる高級な工夫茶なら日本でも買えるが、作り置きしておいて毎日飲めるリーズナブルなお茶を買いだめしたいとなると、日本で買えるものは限られてくるのが現状だ。
台湾は街のいたるところに小吃店があり、空腹をちょっとだけ満たす、文字通りの「虫養い(腹の虫が鳴らない程度に少しだけ小腹を満たすこと)」のできる店が多くあり、その多くが個人営業店だ。
麺1杯、おかずひと皿が日本円で200円するかしないかの安価な料理を、メニュー数を絞り、薄利多売で提供する。
個人店なので、どこもその店独自の味付けだ。
日本では、安価な料理で、チェーン系でない店独自の味を出す店は、ラーメン店がほとんどで経営が成り立ちにくくなっている現在、台湾のこのような小吃店は魅力的に映る。
そんな中でも、この親親小吃店だけはほかに同じレベルの店がない。
台北に行くたびに必ず訪れているから、訪問回数はたぶん20回を超えているだろう。
値段は二人でおなかいっぱい食べても1000円超えるかどうか。いわゆる、地元密着安ウマ店だ。
「シェフ独自の腕の冴え」などというカテゴリのお店ではないから、魯肉飯のバラエティを考えても、台湾にこのようなレベルのお店はほかにきっとあるのだろう。
まだ見ぬレストランの多さに懐の深さを感じさせてくれるのが、台湾の食の魅力だと感じる。
この日は久し振りに夜の訪問。
行列することなどはなく、お客さんの滞在時間も短く、それでいてつねにほぼ満席だ。
親親は小吃店なので、ひとりで行って3皿くらいでちょうど1食だ。
大人数で行けばもっと多くを注文できる。
一人で行っても、大人数で行っても楽しめる。
本日の注文
(お店では台湾語しか通じないので、メニューをメモ書きして渡す)
魯肉飯(ルーロー飯)
蛤仔湯(はまぐりスープ)
肉燥意麺(乾)(平打ち汁なし麺)
燙青菜(茹で青菜)
貢丸湯(肉団子スープ)
キャベツ(オーダー名不明)
魯肉飯はあっさり系。
ごはんが日本のねばりのあるコメでなく、もっとぱさぱさしているので、肉汁がかえってよくなじむ。
必ず頼むのが蛤仔湯。
針生姜とどくだみが強く香る。
味は日本の吸い物よりも薄く、驚くほど上品だ。
その中にぷりぷりのはまぐり。
蚵仔湯も頼んだことがある。これは牡蠣にうまみがありすぎるのか、うまみのバランスが蛤仔湯ほどではなく、蛤仔湯ほどの感動はなかった。おいしいことには変わりないのだけど。
肉燥意麺(乾)。
意麺とは、細平打ちのちぢれ麺のこと。
こちらのは、魯肉飯の上にかかる肉燥が載って出てくる。茹でた麺に肉燥を載せただけのシンプルな味。
「乾」は汁なしのオーダーなので、汁ありがよければ「湯」を注文すればいい。
意麺は台南が発祥といわれている。
台北で食べる意麺は基本的に茹で麺なのだが、発祥の地台南では、揚げて出すらしい。
その意麺、台南の意麺がカップラーメンのルーツだという話は、台南でもよく知られた話らしい。
安藤百福氏が生まれた樸仔脚(現・嘉義県朴子市)は台湾の“意麺”の発祥地と呼ばれる台南県塩水鎮に近い距離にある。幼少時に父母に死に別れた“呉百福”は祖父母に引き取られて台南市で育ったとのことだが、台南の“意麺”は有名であり、彼のインスタントラーメン開発には、台湾の“意麺”が何らかのヒントを与えたことが想像できる。
中国インスタントラーメン攻防記(北村豊)日経ビジネスONLINE
燙青菜。
今回はレタス。にんにく系の調味料がかかっている。
その日によって青菜の種類は変わる。
貢丸湯
肉団子はたぶん豚肉。
蛤仔湯よりはスープは主張しない。やはり針生姜とどくだみがないとずいぶん印象が変わる。
相席になった台湾人のお客さんに、ほかのスープ類でも「加丸」というと肉団子を入れてくれると教わった。香港のスイーツに団子を加えるときと同じだ。
二人ではこれだけだとちょっと足りなくて、相席のお客さんが食べていた茹でキャベツを注文してみた。
茹でただけのキャベツだけど、肉燥の残りの油?のような濃い油がかけてあり、食べ応えがあった。
ちなみにこの店には、お酒やお茶は置かれていない。
無料のお水などもないので、いつも隣にあるファミマでお茶やビールを買って持ち込む。
そんなところで稼ごうと考えてない朴訥な感じも、このお店の魅力の一つかもしれない。
台湾の小吃のおいしさの基準はほとんど「好み」だ。
台湾で最もポピュラーな、煮込み豚肉かけ飯「魯肉飯」も、どの店も味付けや濃さや量が異なる。
どの店が飛びぬけておいしいというものではない。
だからこそ、台湾で行き当たりばったりで知らない店に入っても「ぜんぜんダメ」ということはほとんどない。
旅行者にとって、予約なしで入って「ぜんぜんダメ」な店が少ないというのはありがたいことだ。
地元の人たちはきっと、だれもが自分のお気に入りのお店をもっているのだろう。
親親小吃店
台北市中山區中原街14號
+886-2-25415225
営業時間;11:30~(夜9時頃まで)
定休日;土曜日
新純香茗茶
http://www.taiwangoodtea.com.tw/台北市中山區中山北路一段105巷13號之1-1F
+886-2-25432932
営業時間;10:00~22:00
定休日;基本的になし。旧正月期間は休み。
中国茶はいつもこちらで。
新純香茗茶は日本でもよく知られたお店で、JCBカードと提携していて割引があるなど、日本人フレンドリー。
茶葉の値段は100g約400円から。
試飲OK。質問は日本語可。お茶菓子も出る。烏龍茶で漬けた梅の実が名物。