レストラン「TOKi」が、8月18日、新橋にオープンした。
奈良県物産館「奈良まほろば館」が三越前から新橋へ移転したことに伴うものだ。
1Fが物産館で2FがTOKi。奈良Akorduが運営を担う。
モダンスパニッシュのコース料理を出すレストラン部分と、アラカルトメニューを出すバー部門が隣り合っている。キッチンは同じだ。
シェフ長谷川豊さんは日本橋「サンパウ」を経て銀座「レ・ロジェ・エギュスキロール」シェフなどスペイン料理経験が豊富だ。
奈良のAkorduシェフ川島宙さんによると、店名TOKiはバスク語で「場所」という意味らしい。
また、かつて奈良県が以前、白金台に「ときのもり」というアンテナショップを運営しており、そこにオトワレストラン(栃木)のプロデュース店「シエル エ ソル」が入っていたのをご存知の方もおいでだと思う。TOKiという名前は実は、その「ときのもり」の「とき」でもある。
オトワレストランのグランシェフ・音羽和紀さんへの、川島さんのオマージュでもあるわけだ。
2軒体制になることによって、奈良アコルドゥの料理がスペイン料理寄りで、東京のTOKiが奈良を表現するというおおよその棲み分けがなされるようだ。
今回は平日限定¥4,200(税込サ別)を大和牛に変更したランチコース(+¥1,300)を注文した。全5皿。
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奈良・東京・スペイン 過ぎゆく夏とすぐそこにあるもの
水タコの炙り 大和ポークのラルドとデンプン 奈良のスペイン
大鉄砲のアホブランコ セロリのグラニテと海老
三輪山本の手延べパスタ麺 イチジクのTempura 生ハムのコンソメと若い八朔
稲藁の香りの大和牛 ナスと巻貝
吉野柿のソルベ 大和紅茶の渋みと種
タコのガリシア風前菜には奈良の大豆とロメスコソースを添える。
「白いガスパチョ」アホブランコは大鉄砲というこれも奈良の豆と海老とセロリのグラニテで生暖かい田んぼのイメージ。
このへんの処理はAkorduと近いと思った。Akorduのコースにこれらが入っていてもわからないだろう。
奈良Akorduでもお馴染みの三輪山本がデュラム小麦で作ったパスタ。
だしは生ハムのコンソメに大和肉鶏のコンソメを合わせる。
イチジクは甘く、甘さと塩加減と油が毎度テッパンのバランスだ。
東京のTOKiの料理の特徴としてわかりやすかったのがデザート。
熟した吉野柿のアイスに、奈良県産の大和紅茶をソースとして添える。かぼちゃの種の砂糖掛けは甘さと香ばしさ。
熟した柿の甘さの中の渋さと紅茶の渋さが繋がる、渋-渋-甘の組み合わせだ。
手法はスペイン、表現されたものは奈良という典型的な構成。さすがだなと思った。
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今はAkorduの川島さんがイメージとコンセプトを考え長谷川さんが料理に仕上げていて、今後もやり方を少しずつ変えながら、2人で料理と店を作っていく体制にするらしい。
ここは県の施設ということもあり、料金は驚くほど抑え目になっている。
川島さんはAkorduやTOKiを、あまり値段を上げ過ぎず「身近にある特別な場所」にしたいと話す。
壁やテーブルは奈良県産の杉材などに柿渋を塗って仕上げた、軽やかでモダンな仕立て。県の面子をかけて作ったなと感じた。
卓上には、薬師寺東塔改修の際に出た土片をキハダの板に載せたオブジェが載る。
生花でないところが「らしい」。
鮮やかな色の要素は、皿の上の料理のみで良いという意思だろう。
レストランの入り口の店名には、サブタイトルがあった。
”TOKi
Nara Local Gastronomy”
「奈良ローカルガストロノミー」。
現地・奈良ではないからこそ掲げる必要のある、また、掲げることができるマニフェストだ。
東京・銀座で、奈良のローカルガストロノミーを展開する。
困難な、しかし可能性を秘めた試みは、始まったばかりだ。
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TOKi
東京都港区新橋1丁目8-4 SMBC新橋ビル2F 奈良まほろば館
TEL: 03-6228-5665
https://toki.nara.jp/
平日・土曜
12:00〜15:30 (L.O. 13:00)
18:00〜22:00 (L.O. 19:30)
日曜・祝日
12:00〜15:30 (L.O. 13:30)
月曜日、第2・第4日曜日休